2本ある旧道のうち“下”を走りたかった久留里は、間違えて“上”に突っ込んでしまった。引き返して改めて走り直そうとしたのだが、夕暮れ迫る奥秩父、真っ暗になる前に早く酷道区間を脱出したかった。
そんな思いでヒーコラ言いながら坂を登ると集落に到達。R140が未だに「R140」である理由は、この集落のためなのだということが分かった。

R140旧道“上”はこの後、もう一つの集落を通過して“下”と合流して、宮平交差点でバイパスと合流して、旧道区間は終わる。最後の用意されていた「プレゼント」、それは…………!!??

3.脇役

2006.8.13 17:06 [地図を表示] トイレ休憩を終えて、出発前に地図を確認。西の方へ目をやれば、秩父の山々が幻想的な景色を作り出していた。

集落内は照明があった旧道“上”だが、中間にはそんな豪華な装備は無い。辺りが大分暗なってきたので、鬱蒼とした林の中は余計に薄気味悪く感じる。道は相変わらず狭く、1.0〜1.5車線をキープしている。ガードレールが整備されている点は、やはり「国道」なのだろう。

トイレより東側は林の中を走る区間が多い。たまにセンタラインの消えた2車線区間が現れたりするので、全線の拡幅工事も考えていたのだろう。結局旧道の拡幅はごく一部に留まったが、バイパス開通という形で2車線化が実現している。

しばらく林の中を走っていると、寺井という名の集落に到達。家ばかりで静かな場所だが、後から家が建った茅ケ崎とは、雰囲気がだいぶ異なる。
ここで、旧道“上”唯一の九十九折れが現れる。通行人に注意しながら狭い急カーブを曲がる。路面は御覧の通りガタガタで、マウンテンバイクでも振動を感じる。

麻生集落を抜けると、崖下に旧道“下”の姿をとらえた。両者が接近しているということは、もうすぐ合流地点である。旧道“上”は“下”と高さを合わせるため、急勾配で一気に駆け下る。

遂に両旧道の合流地点が現れた。合流地点だが信号機はなく、何やら寂しい雰囲気がある。

脇役かよ。
この点線は停止線ではない。「“下”が本線です」と示しているのだ。地図やGoogle Mapの航空写真で見る限り、“下”には民家は無さそうで、集落が3つある“上”はまるで「ただの集落道」のような扱いを受けているではないか。

振り返って撮影。
左側の縦長の青看には“下”に「山梨」と行き先が書いてあるだけで、“上”はあたかも「この先が行き止まり」であるかのように書かれている。ホンマに“上”がただの集落道のように感じる。しかし、どっちも同じ国道140号線である。久留里には山岳険道にしか見えぬが。

ちなみに西側の分岐では、“下”は何も書かれていなかったが、“上”にはちゃんと「栃本」と書かれていた。

4 プレゼント

17:31 [地図を表示] 合流地点より東側は快適2車線が待っていると思っていたのだが、そうは問屋が卸さないのが山道というもの。実際はこの先も狭いままだった。
画面奥、カーブの手前が特に狭く、幅もわずか1.0車線分しかない。もし、トンネルがバイパスより先に開通していたら、あの通行量を考えるとあちこちで修羅場が見られたのかも知れない。怖ッ。

カーブの先に唐突に現れたのは信号機。何故かダブルで並んでいる。丁字路の信号にしては妙だ。何故こんな中途半端な所にあるのだろう?しかも関東では珍しい「残り何分」という表示器も付いている。しかもこの表示器、一目盛りが20秒でなっかなか減らず、イラチな商人はひたすら「忍耐」を要求される。
信号の先には高さ制限バー。幅2.3m、高さ3.34 3.4m……ということは?

待つこと2分半、やっと信号が青になる。やっぱり隧道だった。
手前の信号で2分半待ったので、この隧道が通れるのは2分半。自転車は速度が出ないので、信号が変わる前に足早に通行する。
直進は自動車専用道路で現在は「工事中で通行止め」のようだが、線形からしてR140の旧道に違いない。 どうやらダム建設用の工事用道路のようだ。(2016.4 修正)

何でもないコンクリ隧道にしてはやけに小さい。相互通行をしなければならない程狭いということは、余程古い隧道なんだけど……………。

素堀キタ━━━!!
イマイチ雰囲気は伝わらないが、壁面はごつごつとした岩肌にコンクリートを吹き付けたものであり、中津川林道で見た素堀隧道とはまるで違う、独特な雰囲気だ。隧道は結構長いが照明が点いており、恐がりの久留里でも安心して通れる。
洞内はひんやりとしており、等間隔に並ぶ照明がなんやら回廊のようだ。

隧道を抜けた。地図を見れば分かるが、実はこの隧道は途中で別の隧道が分岐している。いわゆる「洞内分岐」というやつだが、ここで三峯神社へ至る県道が分岐している。成る程、相互通行にしないと、分岐点からここまでで渋滞や事故が起こる可能性がある。
話によると、洞内分岐のある隧道で、相互通行となっているのは非常に珍しく、ここ二瀬ダム付近の国道隧道の分岐は結構有名だそうだ。

最高のプレゼントを貰った久留里。ばか疲れてヘトヘトだったが、ウキウキ気分で三峰口駅を目指す。今日中に帰らねば、茅ケ崎に。

(2016.4 追記) なお、この素掘り隧道は2012–2014年の間に廃止されたようで、厳重に封鎖された隧道の哀れな姿がGoogle Mapのストリートビューで確認出来る。
工事用道路は2016年現在は国道140号線の新線となり、2車線に拡幅された。また、洞内で分岐していた三峯神社方面の県道(埼玉r278)も、洞“外”で国道と接続する形に変わっているようだ。
何気に二瀬ダムの管理事務所も一連の付け替え工事に伴って別の場所に移転している。

隧道より東側は快適2車線路。ただし、照明が無い所は如何にも「田舎の3桁国道」である。イチコクや茅ケ崎市内のR134も照明が無いので、如何に照明が贅沢なモノなのかがよく分かる。
「おにぎり」(国道標識)は合併して秩父市になった後に新調したようで、その下には「彩甲斐街道」と「秩父市大滝」という埼玉県仕様の補助標識が付いていた。

ずーーーーーっと下りっぱなしのR140旧道は、ずーーーーーーっと下りながら宮平の交差点を目指す。途中、行き先を隠してある分岐があったが、地図で判断すると、おそらくダム工事道路となったr210経由でバイパスに至る道であろう。
小雨が降ってきた。下り坂のお陰で一気に駅まで行けそうだ。

[地図を表示] ずーーーーーーーーーーーーーーーーっと坂を下って、R140はようやっとバイパスとの分岐点である宮平の交差点に到達した。ここで新旧のR140はひとつとなる。
ここを右に曲がると三峰口駅方面で、直進はバイパスである。信号が変わるタイミングが変則的で、二段階右折が原則の自転車は、延々と歩行者信号を待たねばならない。

交差点の雰囲気からしてバイパスも結構古そうだが、r210が三峰口駅から中津川大橋の手前まで重複していることから、かつてはr210の単独路線だったのだろう。
Google Mapによると、r210は大滝小学校付近の分岐で単独路線となり、そのままダム工事道路に繋がっている。バイパスが開通してダム工事道路となる前は、r210もさぞかし「たのしい険道」だったのだろう。

ヘトヘトだったので一刻も早く三峰口へ行きたかった。しかし、汗で全身ベトベトの久留里は途中にある道の駅「大滝温泉」に寄り道。ここでの長時間休憩が体力を回復し、お土産を買う余裕も出来た。

若干雨に濡れながら三峰口に着いたのは19時半。既に電車が停まっているが、バイクを輪行袋に入れなければならないので、次の20時半の電車に乗ることに。結局茅ケ崎に帰れなくなってしまったので、東飯能で宿泊することに。
秩父駅周辺で袋に詰めた自転車を担いだ汗だくの不審者が彷徨っていたという事件があったコトは、ここだけの秘密だ。

—酷道140号線旧道〜秩父街道〜—後編
ひまわりデザイン研究所